クエン酸

【美容成分】クエン酸とは?成分の効果や副作用を解説

「収れん作用」「保湿作用」「角質柔軟作用」などの目的で配合される美容成分「クエン酸」の効果や安全性について解説します。

クエン酸とは

クエン酸というと口から摂取するイメージが強いと思いますが、実は様々な化粧品の中に美容成分として含まれています。身近な存在であるかもしれませんが美容成分としてどんな働きがあるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

クエン酸とは自然界に存在する有機酸の一種であり、柑橘類などに豊富に含まれる有機化合物です。人が口に入れると“酸っぱい”と感じる酸味成分であり、においはなく、弱酸性の性質を持っています。

化学構造としては“ヒドロキシ基”を持つものでヒドロキシ酸と呼ばれる成分の仲間です。漢字では“枸櫞酸”と表記されます。
クエン酸の“クエン”は日本の在来種であるミカン科、“丸仏手柑(まるぶしゅかん)” の漢名である「枸櫞(くえん)」が語源です。

英語では「Citrate」で、柑橘類を意味する「Citrus(シトラス)」が語源となっています。クエン酸は私たちの身体の中でも産生され、疲労回復のほか、生体内エネルギー代謝において、大切な働きを担っています。

食品としては食品添加物としてまた、美容面においては化粧品やメイクアップ用品などに幅広く用いられています。

クエン酸に含まれる成分と性質

クエン酸は、AHA(アルファヒドロキシ酸)の一種で、化粧品の全成分表示に表記される場合も、医薬部外品の表記も「クエン酸」となっています。
特徴としては水に溶けやすい無色透明の結晶・粒・塊あるいは白色の結晶性粉末の形をしており、熱に強いという性質を持っています。
化粧品成分としてのクエン酸は、さつまいものでんぷんなど糖質を発酵させて生産されることが多いです。

クエン酸の効果

クエン酸は酸性でたんぱく質を溶かす作用があります。化粧品に含まれる濃度が高いものを使用するとピリピリと肌に感じることもあります。
そのため、化粧品にクエン酸を配合する際は、クエン酸Naと一緒に用いることが多いです。クエン酸Naとはクエン酸ナトリウムのことで、クエン酸の酸とナトリウムを反応させ、中和させているものです。化粧成分としてのクエン酸の働きには以下のものがあります。

収れん作用

収れん作用とは、たんぱく質を変性させることによって組織や血管を引き締める作用のことです。クエン酸は酸性の成分であるため、その他の配合成分をあえて酸性に引き寄せるための使用ができます。

このようにクエン酸には、毛穴ケアや肌のキメを整える働き、肌を引き締める作用があります。また皮脂や汗の分泌を低下させるため、化粧崩れ防止として美容化粧品などに含まれています。

ピーリング作用

“ピーリング”とは酸の力で肌の表面の角質を溶かし、除去するスキンケアのことを指します。古くなった角質が蓄積されると肌はくすんで見えます。

また角質層が分厚く層になって蓄積されることで、化粧水や美容液の有効成分が浸透されにくくなり、肌に必要な有効成分が浸透しにくいというマイナス効果もあります。

さらに古くなった角質は角栓の原因ともなってしまいます。角栓が毛穴に詰まってしまうと、毛穴が目立つだけでなく、皮脂が酸化して黒くなり、“黒ずみ毛穴”となる場合もあります。

このように角質が古いままだと肌に良くない影響を及ぼします。そのため角質除去に有効なスキンケアのひとつがピーリングなのです。クエン酸は弱酸性なので、肌の表面の古い角質を取り除く効果があり、肌のターンオーバーを助ける働きがあります。

古くから日本でもお風呂にゆずやザボン、みかんの皮などを入れる習慣がありますが、これもクエン酸を用いた一種のピーリングだと言えます。

pH調整作用

クエン酸がもつpHバランスを整える機能は、肌にとってとても重要な役割を持っています。肌の最も外側にある角質の上には、天然の汗と皮脂が混ざり合ってできる保護膜が形成されています。この保護膜には肌の水分蒸発を防ぎ、外部環境から守る働きがあり、これを“肌のバリア機能”といいます。

この保護膜が形成されていることにより、肌のpH値は弱酸性を保ちます。肌のpH値は弱酸性に保たれることによって常在菌のバランスが整い、アクネ菌といった有害菌が住みにくい環境を作ってくれるのです。

しかし何らかの原因で肌のpHバランスが崩れてアルカリ性に傾いてしまうと有害菌が繁殖しやすくなり、肌のトラブルが起きやすくなります。このように化粧品にクエン酸のようなpHバランスを安定させる成分が配合されていると、肌を健やかに保ち、肌のキメを整える働きが期待できるのです。

保湿作用

クエン酸には保湿作用があるため、肌をしっとりとさせ、潤いのある肌へと導きます。そのため年齢に応じたエイジングケアに用いられることもあります。

キレート作用

キレート作用はクエン酸が金属イオンと結合する性質のことを指します。キレート剤は別名、金属イオン封鎖剤とも呼ばれ、品質を劣化させるカルシウムや鉄イオンといった金属イオンから化粧品を守る安定剤の一種です。
キレート作用によってミネラルが包み込まれることによって酸化しにくくなり、栄養素の吸収率も上がります。またクエン酸はペンテト酸Naなどと同じくキレート剤として水の中の微量金属とくっつき、化粧品を安定に保つ働きがあります。

酸化防止剤としての作用

化粧品に配合されている成分は酸化しやすい成分(例えば油脂やロウ、ビタミンなど)がたくさん含まれています。これらが酸化してしまうと物によっては異臭を放ち、肌に刺激を与えかねません。
クエン酸にはキレート効果による酸化防止剤としての効果があります。酸化防止剤は化粧品の酸化を防ぐための成分です。
このようにクエン酸には天然の酸化防止機能があるため、長期保存を目的に配合されることもあるのです。

クエン酸の副作用

クエン酸は濃度依存的な刺激性のある化粧品成分です。しかし10%以下の配合においては皮膚への刺激性、眼刺激性はほとんどありません。約40年以上の使用実績があり、アレルギーの報告も現時点ではありません。

通常クエン酸は、pH調整やキレートを目的に配合される場合でも微量の配合にとどめられています。またクエン酸の安全性においては有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載されています。

そのため、適切な化粧品配合量での通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であるといえるでしょう。したがって普通肌や脂性肌に限らず、混合肌や乾燥肌、敏感肌、インナードライ肌など、どんな肌質の人にも使うことが可能です。

ただしどんな成分も誰にでも安全ということはいえず、肌荒れやかゆみなどの化粧品かぶれなどの副作用が100%出ないとはいえません。アトピー性皮膚炎や肌が弱い人は使用する前にパッチテストをすることを推奨します。

クエン酸を使用する際の注意点

クエン酸は一般的な使用量が守られていれば有害性はなく、赤ちゃんでも安心して触れられる成分です。しかし10%以上の濃度のクエン酸が目に入った場合、軽度〜中度の刺激性を持つため、この点には注意が必要です。

特に収れん化粧品やピーリング化粧品といった高濃度でクエン酸が配合されている場合は、スティンギングが起こるリスクがあります。スティンギングとは、製品を使用する際に感じるピリピリとした痛みを示すことです。

クエン酸においては濃度5%以上かつpH5以下という条件下においては、皮膚炎などの患者がスティンギングを引き起こす恐れがあります。このようにクエン酸が高濃度の場合、敏感肌や乾燥肌の人はクエン酸の配合量に注意し、基準を下回るものを選ぶようにすると良いかもしれません。

クエン酸が含まれている化粧品

2011年に海外で行われた配合調査によると、クエン酸は約6,800種類にも及ぶ化粧品に配合されているというデータがあります。最も多い配合量の化粧品の場合、全成分のうち39%がクエン酸で占められているものもあり、なかでも皮膚接触を伴う製品に多くクエン酸が用いられているようです。

クエン酸は化粧品に配合される場合は、

  • 酸性によるpH調整・pH緩衝
  • 収れん作用

主にこれらの目的でボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、ファンデーションや日焼け止めといったメイクアップ化粧品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ピーリング製品、デオドラント製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

また濃度を高めれば収れん効果やピーリング効果もあるので、収れん化粧水やふき取り化粧水、毛穴ケアの化粧水にも配合されます。ここ最近ではエイジングケア化粧品やエイジングケア美容液などにも配合されるようになっています。

酸性によるpH調整・pH緩衝とは

酸性によるpH調整・pH緩衝に関しては、前提知識としてpHと皮膚との関係およびpH緩衝についてみていきます。

pH(ペーハー、ピーエッチ)とは、水素イオン指数とも呼ばれ、水溶液中の水素イオン濃度を表す指数のこと。
7を中性とし0〜14までの数値で表され、7より低いときは酸性、数値が高くなるほどに強アルカリ性を意味します。皮膚のpHとは皮膚表面を薄く覆っている皮表脂質膜(皮脂膜)のpHのことを意味します。

皮表脂質膜は皮脂の中に含まれている遊離脂肪酸や汗に含まれている乳酸やアミノ酸の影響でpH4.5-6.0の弱酸性を保っていることが正常です。
その一方でpHが4.5-6.0の範囲から離れるほど、肌への刺激が強くなっているということが言えます。

ちなみに緩衝溶液とは外部からの作用に対してその影響を和らげようとする性質をもつ溶液のこと。pH緩衝溶液とは酸とその塩、あるいは塩基とその塩の混合液を使用することによって、ほぼ一定のpHを維持する、pH緩衝能を持っている溶液のことをいいます。

たとえば人間の皮膚は弱酸性ですが、入浴などで中性に傾いたとしてもすぐに弱酸性に戻ってしまうのですがそれは、緩衝作用が働いているからです。多くの化粧品製剤にはpHが変動してしまうと効果を発揮できなくなる成分や品質の安定が保てなくなる成分が含まれています。

そこで用いられるのがクエン酸です。クエン酸は弱酸を示す有機酸であることから、製品自体のpH調整や製品に化粧品成分を配合する際、中和する働きを持たせるためpH調整剤として使用されているのです。

さらに製品の内容物が大気中の物質に触れたり、人間の細菌類に触れたとしても品質(pH)を一定に保つpH緩衝剤として、酸性の特性を持つクエン酸とその塩であるクエン酸Naが汎用されています。

クエン酸が含まれている化粧品の選び方

クエン酸は肌を健やかに保ち、肌のキメを整える働きが期待できます。また肌の収れん作用や肌のバリア機能を高めることができるため、健やかな肌を保つためにも長期的に日々用いる基礎化粧品、洗顔料、クレンジングについてはクエン酸が含まれているものを選ぶのが良いでしょう。

またクエン酸は肌の保湿作用を高めることもわかっているため、保湿効果だけでなく、アンチエイジング効果も期待できます。特にスキンケア化粧品、シート&マスク製品に含まれているかどうか、購入時に成分表を見て判断するようにしましょう。

化粧品を選ぶ際、特に注意したいのがアトピー性皮膚炎や敏感肌の人。前述したようにクエン酸の配合濃度が高すぎると、肌に刺激を感じてしまう恐れがあるため、試供品などでパッチテストを行うことをおススメします。

まとめ

クエン酸には肌の収れん作用やピーリング効果、保湿作用のほかに、酸化防止作用といったことが期待できるため、様々な化粧品に用いられていることがわかりました。副作用については、10%以下の配合においては皮膚への刺激性、眼刺激性はほとんどありません。
ただし10%以上の濃度のクエン酸が目に入った場合、軽度〜中度の刺激性を持つことがあります。クエン酸の配合濃度が高すぎると、肌に刺激を与えることがあるため、アトピー性皮膚炎や敏感肌の人は、肌に合うかどうか事前に試しておくと良いでしょう。

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