ユキノシタエキス

【美容成分】ユキノシタエキスとは?成分の効果や副作用を解説

「色素沈着抑制」「抗アレルギー」などの目的で配合される美容成分「ビルベリー葉エキス」の効果や安全性について解説します。

ユキノシタエキスとは

天然の成分であるユキノシタエキス。非常に多くの作用を持つ化粧品成分として注目されている成分です。様々な化粧品の中に含まれていることが多いことから、深く知りたいと思う方も多いのではないでしょうか?

ユキノシタエキスの成分となるユキノシタ(雪の下)は、中国または日本を原産国とします。

学名および科目は、ユキノシタ科植物ユキノシタ(学名:Saxifraga stolonifera = Saxifraga Sarmentosa 英名:Strawberry Geranium)。

日本では四国や長野県など、山地の湿った岩土などに生息し、観賞用などとしても庭先に広く栽培されています。ユキノシタエキスはユキノシタの全草に水やエタノールといった混合液を混ぜ、それを抽出することによって得られるエキスです。通常の表示名は以下のように表されます。

[化粧品成分表示名称]
・ユキノシタエキス
[医薬部外品表示名称]
・ユキノシタエキス

ユキノシタエキスは天然成分であることから、地域や時期、抽出方法によっては成分配合のバランスが若干異なることがあります。
成分組成としてはアルブチンをはじめ、フラボノイド、フラボノールに分類される、サキシフラギン、ケルシトリン、ケルセチン、アントシアニンのほか、フェニルプロパノイドに分類されるクロロゲン酸などが含まれています。

ユキノシタは化粧品以外にも西洋医学・東洋医学の両面で生かされており、日本や中国では解熱、解毒、消炎効果が知られています。古くからの民間療法では発熱や湿疹、蕁麻疹が出た時に服用したり、にきびや腫れ物などに生葉の汁を塗布するといった使われ方もされていました。

また、ユキノシタエキスは他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があります。ユキノシタエキスと以下の成分が併用されている場合、複合植物エキス原料として配合されている可能性も考えられます。

  • ファルコレックスPSP(水、BG、ユキノシタエキス、ボタンエキス、クズ根エキス)
  • Dermawhite WF(水、酒石酸、EDTA-2Na、硫酸Na、ピロ亜硫酸Na、グリセリン、BG、ユキノシタエキス、パパイア果実エキス、グアバ果実エキス)
  • Biowhite(ユキノシタエキス、ブドウ果実エキス、BG、水、ヤマグワ根皮エキス、オウゴン根エキス、EDTA-2Na)

ユキノシタエキスの効果

ユキノシタエキスには「ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用」と「メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用」が認められています。

抗アレルギー作用

ここからは前知識として皮膚におけるアレルギーの種類とI型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについてみていきます。

皮膚におけるアレルギー反応は主に即時型アナフィラキシー型(I型)と呼ばれるものと、遅延型細胞性免疫(IV型)の2種類に分類されています。

I型はアナフィラキシーショックをはじめ、蕁麻疹やアレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの疾患が考えられています。またIV型はアレルギー性接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などの疾患が考えられます。

I型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型と呼ばれ、皮膚反応としては15〜20分で発疹が出るのを特徴として皮膚反応を引き起こします。このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、アレルギーを起こす原因物質が皮膚や口などの粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示。そしてヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を取り込み、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種、IL-4(Interleukin-4)を分泌します。

次にTh2細胞から分泌されたIL-4の効果によってB細胞が刺激を受け、IgE抗体を生成。このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結びつくことによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に収められていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)されます。

それと同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝され、ヒスタミンと呼ばれる物質が放出されます。放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化。アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を高めて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞を活発化し、炎症を起こす原因となります。

このような背景からアレルギー性皮膚炎や肌荒れなど、肌のバリア機能が落ちている場合、ヒスタミンの分泌を抑えることはアレルギー性炎症の抑制のために重要であることが考えられます。

そこでラット由来好塩基球白血病細胞液に様々な植物の抽出物を加えて培養し、ヒスタミンの遊離阻害率を算出したところ、ユキノシタエキス(50%BG抽出)は、60%以上のヒスタミン遊離抑制作用を示したことが明らかになっています。

また、次に、アトピー性皮膚炎である女性患者の顔に0.5%ユキノシタエキスが配合された軟膏を1日2回(朝夕)2週間かけて塗布し、2週間後に評価したところ、アトピー性皮膚炎の症状改善に有効であることもわかっています。この試験結果からもユキノシタエキスにはヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用があることが確認されています。

色素沈着抑制作用

ユキノシタエキスには「メラニン生成抑制による色素沈着抑制作用」、いわゆる美白効果があることがわかっています。

皮膚が紫外線にさらされると、細胞や組織内では様々な活性酸素が生まれるとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌。メラノサイトの増殖またはメラノサイトでのメラニン生合成を促す効果があることがわかっています。

そして日々生成されるメラニン色素は一定量に達するとメラノサイトの突起を通して周辺の表皮細胞に送り込まれ、肌のターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には垢となって排泄されるというサイクルを繰り返します。

健康的な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保たれている一方で、紫外線の当たりすぎや加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症といったメラニン色素の生成と排出の代謝サイクルが乱れると、メラニン色素が過剰に体内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こります。よってこのような理由から紫外線の曝露からメラニン排出までの過程において、いずれかの方法でメラニンにアプローチすることが、色素沈着の抑制に効果的であると考えられています。

過去には培養B16メラノーマ細胞を含む培地に、固形分0.5%濃度の各植物抽出液を加え、メラニン量を算出し比較したところ、0.5%ユキノシタエキスを加えることによって、メラニン色素の生成を抑制することが確認されています。またシミ、そばかすや色黒で悩む10人の被検者(30-50歳)に、5%ユキノシタエキス配合乳液を1日2回(朝夕)3ヶ月間にわたって塗布してもらったところ、色素沈着の抑制または皮膚の明度の向上が確認されています。

さらに同様の試験において5%ユキノシタエキスと他の植物エキスを5%濃度で併用した乳液を塗布した場合、さらなる相乗効果が明らかになりました。このような試験結果からユキノシタエキスにはメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

ただし実験では5%濃度で実施しており、実際の製品配合は一般的に1%以下であることが多いため、効果自体は穏やかな傾向であるかもしれません。

またユキノシタエキスと他の植物エキスを併用することで相乗効果が得られることが明らかになっているため、何らかの植物エキスが併用されている時は、相乗的な色素沈着抑制効果目的で配合されている可能性が高いと考えられます。

また角質層のバリア機能を高めるために有効な成分の代表格として挙げられるのがセラミドです。セラミドは細胞間に存在する成分のうち、5割以上を占めることから肌のバリア機能を保つ上で重要な役割を担っている成分です。

アンチエイジング効果を狙った化粧品にはセラミドが多く配合されていますが、なんとユキノシタエキスにはこのセラミドの合成を促す効果があるといわれています。セラミドは体内で合成することは難しく、この合成を促すユキノシタエキスによって、バリア機能効果を改善することができるのです。

ユキノシタエキスの副作用

ユキノシタエキスは有効性の高い成分でありながら天然成分でもあることから、大人用の商品だけでなく赤ちゃん用の化粧品成分として使われることもあるほどです。

ただし皮膚刺激性・アレルギー性・眼刺激性などといったデータにおいて、十分な研究結果が出揃っていないこともまた事実です。ヒトによる試験は実施されておらず、ユキノシタエキスが人体にどのような影響を与えるのかは、まだ完全には解明されていません。

データ不足という点は否めませんが、その一方で、2000年代以降から我々にとって身近な化粧品に使用される機会が増えており、重大なトラブルが報告されたことはありません。これにより、大きな皮膚刺激やアレルギー反応などを過剰に心配する必要はないことがわかります。

また医薬部外品原料規格にはユキノシタエキスが収載されており、安全性においては一定の評価を受けています。懸念材料が皆無とは言い切れませんが20年以上の使用実績があり、皮膚一次刺激性、皮膚累積刺激性、皮膚感作性(アレルギー性)においてもほとんどなしという結果が出ています。

このような結果から、化粧品配合や通常使用するときにも、一般的には安全性に問題のない成分であるということが言えるでしょう。

副作用などについての報告例は上がってきていないので、使用上に注意することは特にありません。その代わり前述のとおり、ヒトによる研究結果が乏しい点がありこともまた事実です。安全に対する確実性がないため、厳格な安全性を求めるならおすすめはできませんが、天然由来の成分でもあることから、過剰に心配する必要はないかもしれません。

ユキノシタエキスが含まれている化粧品

ユキノシタエキスは化粧品に配合される場合、様々な効能を持つため、スキンケア化粧品やメイクアップ化粧品、化粧下地、日焼け止め製品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、また洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、ボディソープ製品などに汎用されています。

ユキノシタエキスが含まれている化粧品の選び方

ユキノシタエキスは抗アレルギー作用があることから、にきびやアトピー性皮膚炎など、敏感肌用の基礎化粧品に含まれているかどうか、チェックをしておきたい成分でもあります。

またユキノシタエキスにはメラニンの生成を抑制する働きがあることもわかっているので、美白化粧品や日焼け止めといった製品にも配合されているかどうか買う前に確認にしておきたいものです。

さらに肌のバリア機能効果を高めることもわかっているため、ユキノシタエキスはアンチエイジング効果も期待できます。特にスキンケア化粧品、シート&マスク製品に含まれているかどうか、成分表を見て判断するようにしましょう。

まとめ

ユキノシタ、またはそのエキスは民間療法や医薬品としても使われる成分で、日焼け止めや洗顔料などあらゆる化粧品に用いられていることがわかりました。またその効果は抗アレルギー作用や美白効果、肌のバリア機能の改善など、多岐にわたります。

副作用についてはヒト試験による研究結果が出ていないため確実性はありませんが、医薬部外品原料規格に収載されていることからも、ある程度の安全性を確認をすることができます。

化粧品を選ぶときには基礎化粧品だけでなく美白化粧品のほか、日焼け止めにも配合されているか注目したい成分です。

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